「地図に残る仕事」。かつてこんなキャッチフレーズのコマーシャルがあった様に記憶しているのですが、記憶違いでしょうか?
この仕事を始めるまで建設業界とは無縁の生活を送っており、業界未経験者が現場に出て作業することは体力的にも厳しく、毎日四苦八苦しておりました。
それでも一ヶ月もすると随分と体も慣れてきて、現場では職長や他業者の人たちとも笑顔で会話を持てるようになってきました。
現場へは直行直帰で、就業時間は8時-17時。それまでの仕事よりもずっとメリハリがあって分かりやすいし、居心地も悪くなく拘束時間も短い!でもやっぱり多少慣れてきても肉体的に決して楽ではないし、知らないことが多く戸惑う機会も少なくありませんでした。
そんなある日、車に子供を乗せて走っている時にたまたま通りかかった地域の基幹病院は、以前に作業した事のある現場で、数週間前に立派に完成していたのです。きれいな5階建ての新しい病院を子供と見上げて思わず、「この病院の上のところ、ちょっと斜めになってるだろ?あそこ父ちゃんがケレン棒ってやつでコリコリ削ったんだぜ。」と言ってしまいました。子供は一瞬呆けた顔をした後、半笑いで「スゲーじゃん」と言っておりました。
いや~、なんかこれがチョット嬉しかった。その後も付近を通るたびに繰り返し言及していたら、5回目を数えた辺りから逆に「もう聞き飽きたよ」と言われて辞めましたが、それ以外にも自分が関わった現場や仲間たちが携わった建物は「何だか少し誇らしい場所」として自分の地図に記されるようになりました。仕事から「辛さや大変さ」が取り除かれていく感じでした。
自分自身が「地図に残る仕事」が出来るわけではないけれど、「”自分の“地図に残る仕事」というのもなかなか感慨深いものがあるなぁ、と思う様になりました。