当社では、毎月3~4回の頻度で【特別教育講習】を実施しています。先日も都内某所にて【フルハーネス型墜落制止用器具使用作業特別教育】講習を実施しました。
フルハーネス特別教育は、建設業での労働災害の約4割を占める『墜落・転落事故』を防止する目的で、2018年6月に【労働安全衛生法施行令】の一部改正されることとなり、2019年2月より特別教育の義務化が適用され、今までの『安全帯』という名称も『墜落制止用器具』と変更されました。
つい、この前に改正されたばかり・・・、なんて感覚でいましたが、施行・適用されてから既に5年以上が経過しました。講習の合間に受講者と話をするのですが、結構”勘違い”している人が多くまたインターネットなどでも間違った情報が書かれているサイトも見受けられます。ですので、ここで【フルハーネス型安全帯(墜落制止用器具)』について再確認したいと思います。
まず、大前提となるのが下記の【法令】と【改正ポイント】です。
法令:【労働安全衛生規則】 第二編 第九章 墜落、飛来崩壊等による危険の防止
第一節 墜落等による危険の防止
(作業床の設置等) 第五百十八条
事業者は、高さが二メートル以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行う場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。
2 事業者は、前項の規定により作業床を設けることが困難なときは、防網を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。(※原文ママ)
今回の改正のポイント
①安全帯の名称を『墜落制止用器具』に変更する
②墜落制止用器具は『フルハーネス型』を使用することが原則となる
③『安全衛生特別教育』が必要
ここに記載されている【要求性能墜落制止用器具】とは『墜落による危険のおそれに応じた性能を有する墜落制止用器具』のことで、今回の法改正にて【フルハーネス型】を使用することが原則となりました。
また、墜落制止用器具の構造も【新規格】となり、2022年1月2日以降【旧規格】の『安全帯』は使用禁止となりました。よく耳にする”勘違い”として、『建設現場では【胴ベルト型】は使用禁止で【フルハーネス型】しか使えない』、『【フルハーネス型】は【安全衛生特別教育】を受講しなければ着用してはいけない』と思っている人がいるようです。
上記の法令にて『高さが二メートル以上の箇所に作業床を設けることが困難なときは、労働者に墜落制止用器具を使用させる』と記載されています。これを言い換えると『墜落の危険性がある2m以上の高所で作業する場合には【フルハーネス型】を使用しなければならない』となります。
法令上では『作業床がある高所ではない場所』での作業の時にはフルハーネス型の着用義務はありません。(注:現場及び企業ルールにて『フルハーネス型常時着用』となっている場合を除く)
また、『高さが2ⅿ以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて、墜落制止用器具のうちフルハーネス型のものを用いて行う作業に係る業務(ロープ高所作業に係る業務を除く)』をおこなう労働者は【特別教育】を受けなければならない。』とあります。
したがって、作業床がある高所ではない場所でフルハーネス型を着用して作業する場合は未受講でも問題はありません。
詳しい内容については【フルハーネス特別教育】を受講していただければと思います。過去の墜落転落災害の発生状況を分析すると、『安全帯を着用していたが未使用』が約60%『未着用』が約20%、という集計もあります。自分の身を守るためにも、また安全に作業をするためにも、特別教育を受講して墜落制止用器具(安全帯)を”正しく”使う知識を習得しましょう。